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事業承継税制の特例措置とは | 期限や免除内容について解説

2023年12月に公表された「令和6年度税制改正」により、事業承継税制の適用の前提となる「特例承継計画」の提出期限が2年延長され令和8年3月31日までとなりました。適用期限自体は変更ありませんでしたので、特例事業承継税制を使う場合は、早めに情報提供や準備が必要です。また、適用するか適用しないかで納税額が大きく変わることから、承継計画の提出漏れについては、税賠リスクをはらみます。引き続き注意が必要です。

事業承継税制とは

事業承継税制は、平成20年度税制改正で創設された制度です。
その前段として、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」附則第2条において、「政府は、平成二十年度中に、中小企業における代表者の死亡等に起因する経営の承継に伴い、その事業活動の継続に支障が生じることを防止するため、相続税の課税について必要な措置を講ずるものとする。」と規定されました。

これを受けて、相続税法の特則である租税特別措置法において、納税猶予の制度(事業承継税制)が創設されました。このときの制度が、現在でいう「一般措置」となります。
制度の特徴としては、①事業承継相続人が相続した株式等の課税価額の80%に対応する相続税を、②発行済議決権株式総数の2/3を限度として猶予、となります。

事業承継税制 改正の歴史

事業承継税制は、相続税・贈与税を猶予する特例として創設されましたが、使い勝手が悪い等といった意見もあり、その後マイナーチェンジが数度行われます。

平成25年度税制改正では、
①親族だけでなく第三者への承継も認める
②それまでは、承継後5年間ずっと、贈与・相続時における従業員数の8割を維持しなければなかったのが、5年間の平均で8割を維持すれば良い
③経済産業大臣の事前確認が不要化
などの緩和策が執られました。

平成29年度税制改正では、贈与税の納税猶予について、相続時精算課税制度との併用も認めるという改正が行われました。

特例措置の創設

平成30年度税制改正で、事業承継税制は大きな転機を迎えます。「特例措置」が創設されたのです。上記の通り、これまでの一般措置は、相続税の課税価格80%に対応する相続税を、発行済議決権株式総数の2/3を限度として猶予する制度でした。

特例措置では、課税価格の100%に相当する相続税を、発行済議決権株式総数の全株式まで猶予するという、大幅な拡充が行われました。これにより、非上場株式については、贈与税・相続税ともに、一旦は負担ゼロで後継者に承継できることになりました。

また、特例措置については、時限的な措置として、
①平成35(令和5)年3月31日までに特例承継計画を提出すること
②平成39(令和9)年12月31日までの贈与・相続に限ること
とされました。

その後、令和4年度税制改正では、中小企業の事業承継が進んでいないことを受け、特例承継計画の提出期限が【令和5年3月31日】から【令和6年3月31日】まで、1年間延長されました。
また昨年、令和5年12月に発表された令和6年度税制改正では、特例承継計画の提出期限が更に2年間延長され、【令和8年3月31日】までとされました。
ただし、特例措置の適用が、令和9年12月31日までの贈与・相続に限るという期限は延長されていないことに注意が必要です。

一般措置と特例措置の違い

一般措置と特例措置の違いは、下記の通りです。

(1)事前の計画策定等
一般措置:特に不要
特例措置:令和8年3月31日までに、特例承継計画を提出する必要があります。

(2)適用期限
一般措置:恒久的な措置のため、特に期限はありません。
特例措置:令和9年12月31日までの贈与・相続でしか適用を受けられません。

(3)対象株数
一般措置:発行済議決権総株式数の最大2/3までの株式について、納税猶予されます。
特例措置:最大、全株式まで納税が猶予されます。

(4)納税猶予割合
一般措置:贈与税では100%の猶予を受けられますが、相続税は80%猶予です。
特例措置:贈与税・相続税ともに100%猶予となります。

(5)承継パターン
一般措置:複数の株主から1人の後継者への承継の場合のみ、適用が可能です。
特例措置:複数の株主から最大3人の後継者への承継が可能です。

(6)雇用確保要件
一般措置:承継後5年間の平均で、贈与・相続時の8割の雇用維持が必要です。
特例措置:8割の雇用維持を満たさなくても、やむを得ない理由があれば、納税猶予を継続可能です。

(7)事業の継続が困難な事由が生じた場合
一般措置:事業の継続が困難な事由が生じた場合に株式を譲渡した場合であっても、猶予された税額を納付する必要があります。
特例措置:5年間経過後に事業の継続が困難な事由が生じたことにより株式を譲渡した場合には、譲渡価額を基に再計算を行い、当初の猶予税額との差額が免除されます。

(8)相続時精算課税
一般措置:60歳以上の者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与に限り、相続時精算課税制度の適用が可能です。
特例措置:60歳以上の者から18歳以上の者への贈与であれば、親族等でなくとも、相続時精算課税制度の適用が可能です。

おわりに

このように、特例措置では、これまでの一般措置に比較して、大幅に要件が緩和されています。動画教材では、事業承継税制の特例措置の適用や、令和6年度税制改正で提出期限が延長された特例承継計画について、事務所としてどういった姿勢で臨み、顧問先に説明するかについて考え方を示しています。また動画ご購入者には、筆者が所属する「ゆびすい税理士法人」で実際に利用しているスケジュール説明用シートの付録がついています。ぜひ動画と一緒に実務でご活用ください。

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