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役員借入金とは?メリット・デメリットや解消方法を解説

役員借入金は、役員側から見ると「会社に対して貸し付けているお金」になります。この役員借入金は、役員が亡くなった際、相続や事業承継において課題となることが多くあります。解消方法やそもそものメリット・デメリットを見ていきましょう。

役員借入金とは

役員借入金とは、社長などの役員が会社に貸し付けているお金のことです。中小企業では社長からの借入金が、当然のように負債の部に計上されているケースが多々あります。
役員借入金の発生原因としては一時的な運転資金借入のほか、金融機関からの借入と比較した場合の手間や時間、支払利息の節約によるもの、社長による会社の経費の立替払いや、役員給与の未払金が借入金に転化したものなどがあります。

役員貸付金との違い

役員貸付金は、役員借入金とは逆に会社から社長などの役員に貸し付けているお金のことです。役員貸付金の例としては、役員に対して臨時の支払いをしたい一方で、役員給与の定期同額を維持するために、その代替として行われたり、場合によっては社長が勝手に会社の金庫から現金を持ち出したりしたケースなどがあります。

この役員貸付金は、金融機関の融資審査では極めて印象が悪く、その回収可能性が疑われることから、融資審査上はこれを資産から取り除き、同額を資本(純資産)から差し引いて考えることが多いようです。

※役員借入金、役員貸付金は、役員を主語にするか、会社を主語にするかで、逆の意味として使われることがあります。
役員の相続税申告を前提とする場合、会社への貸付金という意味で「役員貸付金」ということがあります。これは、本記事でいう「役員借入金」と同じ意味となります。

役員借入金のメリット

では役員借入金には、どんなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは以下の3つです。

優遇税制を受けられる

役員が追加で会社に出資する増資の場合は、資本金が多額になることにより租税特別措置法上の各種の優遇税制を受けられなくなる場合があります。
ここで各種の優遇税制とは、例えば資本金1億円以下の場合の法人税における交際費の一部損金算入や軽減税率の適用、中小企業技術基盤強化税制による中小企業者等の試験研究費等の特別控除などの様々な税額控除の適用などを指しています、
一方で役員借入金の場合は、資本金は増えないので、中小企業である場合の各種の優遇税制の適用が継続するため、有利な取り扱いになります。

節税効果が得られる

役員借入金は次に見るように、無利息であっても法人個人共に税務上は問題ないのですが、役員に金融機関からの借入金利程度の通常の利息を支払えば、支払利息が損金の額に算入されるため、会社に節税効果をもたらします。
金融機関からの借入であれば金融機関への利息の支払いとなり、資金が外部に流出しますが、役員への利息の支払いは身内への支払いとなるだけでなく、役員給与ではないため、定期同額給与等に抵触する等の制約は受けないというメリットがあります。

利息がない

役員借入金は前記のように通常の利息の授受を行ってもよいのですが、無利息でも差し支えありません。例外的に利息の認定課税を行った判決として平和事件(平成16年7月20日最高裁判決)があるのですが、これは3千億円を超える役員借入金のケースであり、一般的には無利息であっても問題はないとされています。
役員にとっても会社の資金繰りを支援するための貸付で、利息を目的とした貸付ではないのが普通ですし、会社にとっても支払利息の負担なしに資金援助が受けられるといったメリットがあります。

役員借入金のデメリット

反対に、役員借入金のデメリットについても見ていきましょう。

債務超過のリスクがある

役員借入金の金額が多額である場合、資産合計額よりも負債合計額のほうが大きい、いわゆる債務超過となるリスクがあります。
金融機関や仕入先・外注先に対する信用面では、資産合計額が負債合計額よりも大きいいわゆる資産超過と、債務超過では信用面で大きな落差があり、損益面の経常赤字と同様に財務の安全性がないという印象を与えます。
債務超過の場合は、いくら役員からの借入返済請求がないとはいえ、会社として決して健全な財務状況とはいえないからです。

銀行からの目が厳しくなる

役員借入金が多額である会社を銀行から見ると、会社よりも役員個人の信用のほうが大きいのが普通です。つまり実態としては会社というよりも、役員の個人商店に法人格があるだけという見方になります(実際にその通りであることが多いのですが)。
銀行は会社から役員借入金が無くなって初めて、個人商店ではなく名実ともに法人になるとみているわけです。

役員死亡時の相続税が大きくなる

役員からの借入金額が数億円に達している場合にも、役員個人の死亡時には会社に対する貸付金について、通常はそのまま相続税が課税されます。
これについては判例上、債務超過会社に対する貸付金であっても、回収可能性がある限りその額面金額に課税されるという判例があります(平成30年3月27日東京地裁判決)。
こういった場合は、後述のDES(デット・エクィティー・スワップ、負債と資本の交換)により会社に対する貸付金を株式に変えることで、さまざまな株価対策が可能とる結果、相続税対策になります。

役員借入金の精算・解消方法

では前述したデメリットがネックになる場合、どのように役員借入金を精算・解消していけばよいのか、その方法を解説していきます。

役員報酬を減額する

会社から社長に支払われる金額のうち、一定額を貸付金の回収額とすることで会社と社長の資金負担を増やさずに貸付金を徐々に回収できます。
例えば役員貸付金が1千万円あり、役員給与が月額50万円であれば、毎月支払われる50万円のうち半額の25万円を貸付金の回収として残りを役員給与にすれば、年間の貸付金の回収額は300万円になるため、3年強で回収できます。
この方法では会社の資金繰りと社長個人の資金繰りは、(源泉所得税を除いて)対策の前後で影響を受けないため、現実的な対応策と言えるでしょう。
社長個人の所得税や住民税の節税にもなるメリットもあり、家業に近い小規模な会社の場合はこのやり方で十分かもしれません。

暦年贈与を行う

後継者が長男等の親族に確定しているのであれば、暦年贈与において低税率が適用される直系尊属からの贈与(18歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合の特例)を利用して貸付金を社長から後継者に贈与するか、拡充された相続時精算課税制度を利用して会社に対する貸付金を社長から後継者に贈与することも考えられます。
直系尊属への贈与は低税率で贈与可能ですので、メリットの多い有利な手法であるといえるでしょう。
さらに会社からは後継者が貸付金の返済を受けることになるため、借入金の返済を急ぐ必要はなく、その面からも資金的な問題は起こりません。

DESを活用する

デット・エクィティー・スワップ(DES)とは債権者が債務者に債権を現物出資し、債務者がこれに対応する債務を消滅させると同時に、資本金の額を増加させる取引であると定義されています(現物出資説)
DESを行った場合、会社法では債権金額をそのまま資本金に振り替えることが認められており、いわゆる券面額説を採用しています。
一方で法人税では、平成18年度の税制改正によって、法人税法上はDESにより増加する資本金等の額は、消滅する債権の時価としています(法人税法施行令8①一、評価額説)。
これにより法人税法上は債権の時価での振替となるため、原則として債権の簿価と時価との差額である債務消滅益が益金の額に算入されます。
DESに伴うこの税務上の債務消滅益に対しては、10年まで繰越期限が延長した繰越欠損金を利用することで対処可能です。
なお仮に社長が100%オーナー株主である場合には、単純に債権放棄(債務免除)を行うことで、負債を単純に消滅させ、借入金から繰越利益剰余金に振り替える方法が簡単です。
この債権放棄(債務免除)の場合も債務免除益が益金の額に算入されるため、繰越欠損金制度を利用するなどタイミングを見計らって行うことになります。

おわりに

中小企業では役員借入金は当たり前のように存在しているため、これについて特に違和感のない方も多いかと思います。
しかし金融機関や仕入先・外注先等の外部の利害関係者はそう思っておらず、役員借入金が無くなって初めて一人前の会社とみています。
したがって、役員借入金の解消努力は必要であり、税理士先生は顧問先に対して、正規の返済以外にも債権放棄(債務免除)、DESや贈与等を用いてこれを少しでも早く解消する努力を促して頂きたいと思います。

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