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インボイス制度で消費税計算はどう変わる?

インボイス制度とは

消費税は、お客様から受領した対価の110分の10(軽減税率が適用される取引については108分の8、以下同様です)と業者に支払った対価の110分の10の差額を国に納める税金です。この差額がマイナスになった場合(業者に支払った対価の方がお客様から受領した対価よりも大きい場合)には、そのマイナス分が還付されます。

この「業者に支払った対価の110分の10をお客様から受領した対価の110分の10から差し引くこと」を『仕入税額控除』といいます。
この仕入税額控除を行うためにはその取引の内容を後から証明できるようにしておくことが要件とされており、これまでは、業者が発行した請求書などを保存しておくこととされていました。

しかし、支払先の業者が免税事業者である場合には、支払側では仕入税額控除を行い、受領側では消費税を納めないため、その仕入税額控除の分は国庫に納められないことになります。消費税率が3%とか5%のときはあまり問題にならなかったのですが、税率が大きくなるとこの国庫に納められない額も大きくなることが問題視され、消費税の申告納付を行う課税事業者に対して支払ったもののみ仕入税額控除ができることとされ、導入されたのがインボイス制度(適格請求書等保存方式)なのです。

これまでは支払先の業者が免税事業者なのか課税事業者なのか分からなかったため、それを確認することなく全て仕入税額控除の対象としていたのですが、インボイス制度開始以降は免税事業者に対して支払った対価については仕入税額控除に制限がかかります。
このようなことを実現するためには課税事業者に背番号をつけて、それを請求書などに記載することにより消費税を申告納付する事業者だということを取引相手に知らしめる仕組みを作る必要があります。そこで、適格請求書発行事業者の登録を行い、登録番号を請求書などに記載することとされたのです。このようなインボイス制度が導入される訳ですから、適格請求書発行事業者の登録を行うと課税事業者になります。
この登録番号をはじめとした一定の事項が記載された請求書などを適格請求書(インボイス)といいます。
このインボイス制度は2023年10月1日から開始されます。

インボイス制度で消費税の計算方法はどう変わるのか?

端数処理の方法が変わる

お客様に対して請求を行う場合など税込み対価の計算を行う場合、これまでの端数処理の方法についてはルールがなく、商品1点ごと、同じ商品ごとなどに消費税の端数計算(切り上げ、切り捨てまたは四捨五入)が行われていました。
しかし、インボイス制度開始後は端数処理についてルールが設けられます。それは、1つのインボイスについて税率ごと(10%or8%)に集計を行い、その税抜き合計額に税率をかけて消費税額を求め、その時に端数処理をするというものです。つまり、1インボイスについては、それぞれの税率ごとに1回だけ端数処理を行うことになるのです。
なお、端数処理を切り捨て、切り上げまたは四捨五入のいずれかにするのかということについてはこれまで通り任意となっています。

積上げ方式の計算が可能になる

消費税の申告において、課税標準額に対する消費税額及び控除対象仕入税額の計算にあたり、割り戻し計算と積み上げ計算という2種類の計算方法があります。割り戻し計算とは、課税期間中に計上した課税売上や課税仕入れの税込み対価の合計額に110分の10をかけて計算する方法で、これまではこれによって計算を行ってきました。
これに対し、積み上げ計算というのは、インボイスに記載された消費税額を合計して課税標準額に対する消費税額また
は控除対象仕入税額とする方法です。

インボイス制度開始後は、課税標準額に対する消費税額の計算は割り戻し計算、控除対象仕入税額の計算は積み上げ計算がそれぞれ原則となります。
課税標準額に対する消費税額を積み上げ計算とすることもできますが、この場合には控除対象仕入税額を割り戻し計算とすることはできないため、こちらも積み上げ計算とすることになります。
なお、従来通り両方とも割り戻し計算とすることは可能です。

消費税の課税方法

免税

事業者(法人及び個人事業者)の消費税法上の立場としては、「免税事業者」と「課税事業者」に分かれ、さらに課税事業者は「原則課税」と「簡易課税」に分かれます。まとめると、免税、原則、簡易の3つのうちいずれかに該当することになります。
このうち、免税事業者は消費税の申告納付の義務がない事業者をいいます。免税事業者は申告義務がないため、納付も不要となるのですが、還付となるべき場合にも申告することができないため、還付を受けることができません。

免税事業者となるためには、①課税事業者選択届出書の効力が生じておらず、かつ、②基準期間における課税売上高が1,000万円以下、かつ、③特定期間における課税売上高が1,000万円以下、かつ、④資本金1,000万円以上の法人の第1期目または第2期目に該当せず、かつ、⑤特定新規設立法人に該当せず、かつ、⑥課税事業者を選択した当初2期または資本金1,000万円以上の法人の第1期目または第2期目の課税期間(原則課税であるものに限る)に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合の3期目(第2期目にこの課税仕入れを行った場合には4期目も)に該当せず、かつ、⑦当課税期間開始の日前3年以内の各課税期間(原則課税であるものに限る)において高額特定資産の課税仕入れを行っていないこと、といった7つの要件を全て満たす必要がありますが、インボイス制度開始後はこれに⑧適格請求書発行事業者の登録を行っていないこと、という要件が加わります。

原則課税

先述の免税事業者の要件を一つでも満たさなければ課税事業者となりますが、このまま何もしなければお客様から収受した対価の110分の10と業者に支払った対価の110分の10の差額を納付税額し、差額がマイナスとなったら還付される原則課税となります。
原則課税は損も得もしない課税方法といえます。

簡易課税

課税事業者の中には、業者に支払った対価に消費税が含まれているかどうかが分からない人もいるため、このような人のためにお客様から収受した対価の110分の10だけから納付すべき消費税を計算する方法を次の要件の下、選択することができます。

①消費税簡易課税選択届出書の効力が生じており(簡易課税によって控除対象仕入税額を計算しようとする課税期間の初日の前日(事業を開始した日の属する課税期間については、その課税期間の末日)までに届出を行い、その後不適用の届出を行っていないこと)、かつ、②基準期間における課税売上が5,000万円以下であり、かつ、③課税事業者を選択した当初2期または資本金1,000万円以上の法人の第1期目または第2期目の課税期間(原則課税であるものに限る)に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合の3期目(または第2期目にこの課税仕入れを行った場合には4期目も;その課税仕入れが原則課税の期に行われた場合のみ)に該当しておらず、かつ、④当課税期間開始の日前3年以内の各課税期間(原則課税であるものに限る)において高額特定資産の課税仕入れを行っていないこと

納付税額については、その取引が第1種事業(卸売業)、第2種事業(小売業、食料品に該当する農業・林業・漁業)、第3種事業(農業・林業・漁業、建設業、製造業など)、第5種事業(サービス業など)、第6種事業(不動産業)、第4種事業(飲食業、固定資産の譲渡、その他の事業)のいずれに該当するかに応じてみなし仕入れ率と呼ばれる割合を乗じて計算します。

簡易課税はお客様から収受した対価の110分の10のうちいくらかを納付する計算方法なので、業者に支払った対価に係る消費税の還付を受けることはできません。
原則課税に比べて損か得をする計算方法といえます。

おわりに

インボイス制度が開始されると、実に様々な変更点があり、複雑化します。その中でも免税・原則・簡易の有利選択の考え方が従来から変わっているということは意外と知られていないと思います。

課税方法の選択は翌課税期間の選択となりますから、責任問題になりやすい部分ですから、お客様に不利な選択とならないよう、是非、新しい判断の考え方を身に着けて頂きたいと思います。

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