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農地の相続税評価額 | 農地区分ごとの評価・計算方法、納税猶予を解説

申告された相続財産の金額の構成比は、不動産が相続続財産の構成割合の第一位を占めており、このことからも、不動産評価をないがしろにはできません。農地等を含む不動産の評価額は基本的に高額であり、評価を誤ると課税価格に及ぼす影響は小さくないのが実情です。

農地評価は相続税の専門家としての知識や技量が如実に表れる分野であり、相続税評価に精通していない税理士にとっては苦手分野といわれる所以です。
したがいまして、評価誤りをして損害賠償責任を問われることのないように評価について基礎から習得することが大事です。

農地の相続税評価額の計算方法は区分によって異なる

農地の本質を理解せず、いきなり農地の評価をしようとすると、基礎がない土地の上に建物建築するのと同じで、建物そのものが倒壊します。一見、遠回りに思われるかもしれませんが、農地評価を理解するためには、農地の行政法規である農地法等を理解することが必要です。それが農地評価を習得する上で早道です。

農地を理解するためには農地の区分を理解することが大切です。農地は、本来的に農地法により区分されています。農地法を理解した上で相続税法上の区分を習得し、比較対比をしてその違いを理解することが評価実務を行う上で重要です。

農地の相続税評価額の計算方法は区分によって異なる

※国税庁資料に一部加筆

農地法上の区分

まず農地法上の区分について見ていきます。農地は宅地への転用がしやすい順番に(1)第3種農地、(2)第2種農地、(3)第1種農地、(4)甲種農地とされています。農地法上の区分を確認する際は、市区町村の役所窓口で確認しましょう。

(1)第3種農地

第3種農地は、市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地です。

第3種農地については、その転用は原則許可されます。なぜなら第3種農地が存する区域は、市街化が進んでいるからです。具体的には①~④いずれか1つの要件に該当します。

①上・下水道又はガス管のうち2つ以上が前面道路まで埋設されており、かつ500m以内に2つ以上の教育、医療、その他公共施設がある農地
②鉄道の駅、官公庁、インターチェンジ等から300m以内の農地
③街区の面積に占める宅地化率40%以上の区画にある農地
④用途地域内にある農地

(2)第2種農地

第2種農地は、市街化が見込まれる区域の農地です。具体的には①~③いずれか1つの要件に該当します。

①鉄道の駅、官公庁、バスターミナル等からおおむね500m以内の農地
②用途地域から500m以内にあり、かつ「10ha以上の集団的農地」から外れている農地
③第1種農地にも第3種農地にも該当しない農地

(3)第1種農地

第1種農地は、原則転用不許可(例外的に許可)農地です。生産性の高い集団的農地区域内の農地です。①〜③いずれか1つの要件に該当します。ただし、第2種、第3種の要件に該当する農地は除きます。

①概ね10ha以上の集団農地内にある農地
②特定土地改良事業等の施行区域内にある農地
③基準的な生産性を超える農地

第1種農地の例外許可としては農業用施設や、住宅の場合は宅地に接続してなら可能性があります。

(4)甲種農地

甲種農地は、原則として転用不許可農地です。甲種農地は次の農地です。

①特定土地改良事業等完了後、8年経過していない農地
②概ね10ha以上の集団農地で高性能農業機械での営農に適する農地

相続税法上の区分

相続税法上の区分においての農地は、都市部に近い順に(1)市街地農地、(2)市街地周辺農地、(3)中間農地、(4)純農地に区分されています。区分の確認は財産評価基準書で行います。

(1)市街地農地

市街地農地とは、主として市街化区域内にある農地のことをいい、次に掲げる農地のうち、そのいずれかに該当するものをいいます。

イ 農地法第4条≪農地の転用の制限≫又は第5条≪農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限≫に規定する許可(以下「転用許可」という。)を受けた農地
ロ 市街化区域内にある農地
ハ 農地法の規定により、転用許可を要しない農地として、都道府県知事の指定を受けたも

(2)市街地周辺農地

市街地周辺農地とは、市街化区域外にあり、次に掲げる農地(おおむね宅地などに転用することができる農地)のうち、いずれかに該当するものをいいます。

イ 第3種農地に該当するもの
ロ 上記(1)に該当する農地以外の農地のうち、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第3種農地に準ずる農地と認められるもの

(3)中間農地

中間農地とは、次に掲げる農地のうち、そのいずれかに該当するもので一般に都市近郊にある農地のことをいいます。ただし、市街地農地の範囲に該当する農地を除きます。

イ 第2種農地に該当するもの
ロ 上記(1)に該当する農地以外の農地のうち、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地に準ずる農地と認められるもの

(4)純農地

純農地とは、次に掲げる農地のうち、そのいずれかに該当するもので一般に、宅地の価額の影響を受けない農地のことをいいます。ただし、市街地農地の範囲に該当する農地を除きます。

イ 農用地区域内にある農地
ロ 市街化調整区域内にある農地のうち、第1種農地又は甲種農地に該当するもの
ハ 上記(1)及び(2)に該当する農地以外の農地のうち、第1種農地に該当するもの。ただし、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地又は第3種農地に準ずる農地と認められるものを除きます。

農地の区分ごとの評価方法

相続税評価に関して、農地については次表の4種類に区分して評価しており、それぞれ倍率方式または宅地比準方式により評価します。

■農地に関する法規と農地の国税評価方式等の整理

都市計画法等による区分 農地法等の農地区分 相続税法上の区分 国税の評価方式
市街化区域
転用許可済農地
市街化区域農地
生産緑地
市街地農地 宅地比準方式、倍率方式
市街化調整区域
都市計画区域内の非線引き区域
都市計画区域外
第3種農地 市街地周辺農地 宅地比準方式×80%評価
第2種農地 中間農地 倍率方式
第1種農地 純農地 倍率方式
甲種農地
農用地区域内の農地

市街地農地

市街地農地に分類される場合、まず評価方式としては「宅地比準方式」か「倍率方式」の2種類があります。
1. 宅地⽐準⽅式により評価する場合
市街地農地の価額は、次の算式により評価します。

宅地⽐準⽅式により評価する場合

そして上記の計算式で利用する「その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」の計算については、市街地農地の所在が「路線価地域」か「倍率地域」かによって、異なります。

(1)路線価地域内にある場合
評価しようとする市街地農地が路線価地域内にある場合には、その農地が宅地であるとし た場合の1㎡当たりの価額を基に次の算式により算定します。

路線価地域内にある場合

(2)倍率地域にある場合
評価しようとする市街地農地が倍率地域にある場合は、宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額を算出するために、近傍の宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額に宅地の評価倍率を乗じ、さらに位置・形状等の条件を考慮して評価します。

倍率地域にある場合

(注1)近傍宅地の固定資産税評価額の求め⽅
近傍宅地の固定資産税評価額は、市区町村の固定資産税課の窓⼝で確認すると正確なものが得られます。
(注2)土地の評価倍率は、財産評価基準書(倍率表)に記載されています。

【参考】国税庁『財産評価基準書』

2.倍率方式により評価する場合
市街地農地の所在している地域が倍率地域の場合は、その農地の固定資産税評価額に倍率表の倍率を乗じて計算した⾦額によって評価します。

農地の固定資産税評価額 × 評価倍率

市街地周辺農地

市街地周辺農地については、農地転用ができない場合の危険負担があるため市街地農地の評価額に8掛けして評価します。

宅地比準方式で算出した市街地農地の評価額 × 80%

中間農地・純農地

中間農地と純農地については、単純に固定資産税評価額に倍率を乗じて計算します。

農地の固定資産税評価額 × 評価倍率

農地の相続税における納税猶予の特例

農地の納税猶予の特例は、農地を相続した後継者に対して、農地にかかる相続税の納税を猶予する制度です。この特例の適用を受けるには、後継者が農業を続けることや農業を行う人に農地を貸し出すことが条件になります。

「猶予」という語句を見ると税金を納めるのが先延ばしになるだけだと考えがちですが、現実的には「納税免除」と同じ意味と考えていただいて問題ありません。最初に納税猶予を受ければ、通常は、免除事由の発生した時点で、そのまま納税が免除となります。

納税猶予の特例の適用を受ける上で重要なことは、以下の2点です。

①相続発生時に納税猶予を受けるための要件に該当すること
②納税猶予が取消しになった場合には、納税が免除されないので取消事由に該当しないこと

相続税で納税が猶予される税額は、通常の方法で計算した本来の相続税と農業投資価格に基づいて計算した相続税の差額です。農業投資価格とは、農業に使用されることを前提にした売買価格として国税局が定めたもので、通常の宅地評価額よりも低く設定されています。

特例の適用を受けるための要件

では前章①で記載した要件とは、どのようなものなのでしょうか。具体的には以下のとおりです。

■被相続人の要件
以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。

    • 死亡の日まで農業を行っていた
    • 生前に農地を⼀括贈与した
    • 死亡の日まで営農困難時貸付(※1)や特定貸付(※2)を行っていた

※1)障害・疾病などにより農業を続けることが困難となった場合に、その農地等を他⼈に貸し付けること
(※2)市街化区域外の農地を農業経営基盤強化促進法等の規定に基づく事業により貸し付けること

■相続人の要件
以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。

  • 相続税の申告期限までに農業を引き継ぎ、その後も継続する
  • 農地等を生前⼀括贈与されて贈与税の納税猶予の特例を適用していた
  • 相続税の申告期限までに特定貸付を行った
  • その他⼀定の事項

■農地の要件
被相続人が農業を行っていたか特定貸付を行っていた農地で、次のいずれかに当てはまる必要があります。

  • 相続税の申告期限までに遺産分割されている農地
  • 贈与税の納税猶予の特例を適用していた農地
  • 相続があった年に被相続⼈から生前⼀括贈与を受けていた農地

基本的には、亡くなった方から相続人へ農地を相続し、かつ受け継いだ相続人の方が農家であり続けることが主な要件になっています。

農地評価における具体的事例を知りたい方は動画で

ここまで解説してきた農地の相続税評価について、具体的な土地と計算の事例を知りたい方は、ぜひ動画で解説していますのでご覧ください。全3巻の講義のうち、3巻目に収録しております。

【第3巻】事例で確認 農地評価の実際
<事例1> 多額の造成費を要する場合(3大都市圏以外の農地で純農地評価となった事例)
<事例2> 傾斜度別の造成費を計上する事例
<事例3> 宅地に造成費相当額を考慮した事例
<事例4 >水路介在、無道路地がある
<事例5> 路線価が未設定無道路地 評価困難
<事例6 >隣接地が同一所有者 取付道路により評価する無道路地
<事例7> 現況に応じた固定資産税評価がされていない農地

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