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同族会社に不動産を譲渡する際の合理的な時価の算定方法

時価による取引の概要

一般的には、土地の客観的な交換価値の評価方法は、公示価格に基づいて算出する方法が、また、建物、特に中古建物の客観的な交換価値の評価方法は、再建築価額に基づいて算出する方法が、それぞれ合理的かつ適切と認められます。

(1)個人間取引における時価

財産評価基本通達総則第1項(時価の意義)において、以下のように定められています。

「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日をいう。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」

出典:国税庁『財産評価基本通達 第1章 総則 評価の原則(2)時価の意義』

そのため、相続税評価額で売買すれば、個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合に該当しないこととなり、みなし贈与の課税を受けることはないことから、原則として課税上の問題は生じません。

(2)取引の相手方の一方または双方が法人である場合の時価

個人が譲渡所得の基因となる資産を、法人に対して時価2分の1未満の価額で譲渡した場合には、時価で譲渡があったものとみなされます。
なお、同族会社に対して時価の2分の1以上の対価で資産を譲渡した場合であっても、その行為が「同族会社の行為計算の否認」規定の対象となるときは、時価によって譲渡があったものとして課税されることがあります。
また、個人から資産の贈与、遺贈又は低額譲渡を受けた法人は、時価と譲受価額との差額について受贈益として法人税が課されます。

土地・建物の時価を算定する主な方法

土地・建物の時価の算定方法には、以下のような方法があります。いずれの方法も目的に応じた算定方法であることから、一つの算定方法によって求めた時価が必ずしも特殊関係者間において行われる不動産の取引の際の時価を反映しているとは限りません。

そのため、複数の算定方法を用いて時価を算定し、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮して求めるようにします。

(1)建物の未償却残高による方法

建物は同じものは二つとないことから、建物の新築(または取得)した価額から、法定耐用年数によって適正に償却された後の価額、すなわち未償却残高を建物の時価と推測することも考えられます。
その場合に、建物取得時点の価額に基づいてその価額を算出するよりも、譲渡時等における再建築価額等に基づいて算出する方が、譲渡時等における客観的な交換価値として、より合理性があると認められるとする裁決(平成19年3月30日)がありますので、再建築価額等に基づいて未償却残高も算出してその価額の合理性を検証しておかなければなりません。

なお、経営承継円滑化法における非上場株式等評価ガイドラインでは、再調達価額と帳簿価額の差異において、金額的重要性がない場合には、帳簿価額を採用することも考えられるとしています。

(2)固定資産税評価額による方法

地方税法第341条は、固定資産税における価格とは「適正な時価をいう」旨を規定しています。建物等のように再建築見積価額を再調達原価として評価する方法によって適正な価額が算出できない場合には、固定資産税評価額をもって建物等の適正な価額とすることも合理性があると考えられます。
なお、固定資産税評価額は、3年に一度の評価替えであるため、その評価替えを行った年度以外の年度では、直近の時期における固定資産税評価額を基に、時の経過に伴う所要の補正をし、補正後の固定資産税評価額相当額をもって建物等の適正な時価とすることが相当です。

また、一括取得した土地建物の取得価額算出方法として、固定資産税評価額は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき、土地の場合は路線価と同様に地価公示価格や売買実例等を基に評価され、建物の場合は再建築価額に基づいて評価されていますので、土地及び建物の時価を反映していると考えられるうえ、土地と建物の算出機関及び算出時期が同一であることから、固定資産税評価額による按分法が合理的と認められます。

(3)不動産鑑定における時価による方法

不動産鑑定評価基準によると、鑑定評価によって求める価格は「正常価格」であるとされ、正常価格とは合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるだろう市場価値を表示する適正な価格をいうとされています。

鑑定評価の評価手法としては、
①原価法(不動産の再調達に要する原価に着目して価格を求めるもの)
②取引事例比較法(不動産の取引事例に着目して価格を求めるもの)
③収益還元法(不動産から生み出される収益に着目して求めるもの)
の三方式があり、この三方式による価格を比較考量して評価額を決定されます。

しかし、不動産鑑定評価額が常に適正な時価を評価しているとは限りません。裁決で否認されている事案では、取引事例比準価格の算定に使用した取引事例に係る地域要因の格差補正、事情補正及び環境条件の補正等について、種々の不的確な点が認められることから認めることはできない(平成8年7月4日)とし、不動産鑑定評価基準に照らして合理性を欠いている場合には不動産鑑定士の価額が時価と判定されません。

(4)宅地建物取引士による精通者意見による方法

宅地建物取引業法により宅建業者に対し義務づけられている、媒介契約の締結に際して、「価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明示しなければならない」旨規定されていることから、公益財団法人不動産流通推進センターが「価格査定マニュアル」を作成し、宅建業者に提供しています。

宅建業者は、その価格査定マニュアルに基づいて土地や建物の時価を算定しています。

① 土地
戸建住宅価格査定マニュアルでは、土地価格は、取引事例比較法を採用して算定することとされています。

② 建物
戸建住宅価格査定マニュアルでは、戸建ての建物価格は、原価法を採用して算定することとしています。

参考:公益財団法人不動産流通推進センター「価格査定マニュアル」

(5)路線価(土地)

路線価とは、市街地的形態を形成する地域の路線(不特定多数が通行する道路)に面する宅地の、1㎡当たりの評価額のことで、課税価格を計算する基準となるものであり、相続税や贈与税の基となる「相続税路線価」と、固定資産税や都市計画税・不動産取得税・登録免許税の基となる「固定資産税路線価(全国地価マップで確認することができます)」があります。

① 相続税評価額を求める場合
路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額(千円単位で表示しています。)のことであり、路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用います。
なお、路線価が定められていない地域については、固定資産税評価額に国税庁が定める一定の倍率を乗じて計算する倍率方式によって計算することとされています。

財産評価基本通達では、財産の価額は、時価によるものとし、その価額は、この通達の定めによって評価した価額によるとしています。そのため、土地の時価はこの通達によって計算されることとされています。
相続税の路線価は、平成4年以後は、その1月1日の地価公示価格の8割を目途として評価しています。なお、平成3年以前は、前年の7月1日の時価の70%相当額で評定されていました。

② 固定資産税の評価額を求める場合
固定資産税の路線価は、街路に面している宅地を評価するために、街路ごとに付設される価格で、間口や奥行などが標準的な宅地の1㎡当たりの価格(千円単位)で定められます。
個別の土地の評価額の算定に当たっては、路線価をその宅地(一画地)の奥行、間口、形状、街路との関係(角地等の場合は加算があります。)などによって補正し、地積を乗じて求めることとしているため、相続税評価額の求め方とほぼ同一の方法によっています。
固定資産税路線価は、平成6年度の改定から、公的土地評価の相互の均衡と適正化の要請を受け、時価の70%相当額で評価することになりました。

以上のことから、相続税の路線価を基に計算した相続税評価額を0.8で割り戻した金額を時価(不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額)として考えることができます。
(検証のために、固定資産税の路線価によって求めた価額を0.7で割り戻した金額と比較しておけばよいでしょう。)

不動産を譲渡する際の注意点

同族会社へは時価での売却を原則とする

個人から資産の低額譲渡を受けた会社は、時価と譲受価額との差額について受贈益として法人税が課されます。また、同族会社に対して、時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡があったことにより同族会社の株式価額が増加した場合には、株主等は株式価額のうち増加部分の金額を、会社に対して財産の無償提供した者または会社に対して財産を譲渡した者から贈与により取得したものとして取り扱われます。
それらのことから、同族会社へ資産を譲渡する場合には、適正な時価によって譲渡することが肝要です。

個人間取引では、相続税評価額で売買する

相続税評価額は、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうとされていることから、個人間売買では、相続税評価額で取引すれば、みなし贈与の課税を受けることはないことから、原則として課税上の問題は生じません。

個人から法人の場合は、みなし譲渡を避ける

個人が譲渡所得の基因となる資産を、法人に対して時価2分の1未満の価額で譲渡した場合には、時価で譲渡があったものとみなされます。
そのため、特殊関係者間において取引する場合の譲渡価額については、慎重に判断しなければなりません。

おわりに

同族会社へ個人が所有する不動産を譲渡する際には、適正な時価によらないと思わぬ課税を受けることがあります。第三者間の取引であれば利害が対立し自由な取引において適正な時価が求められることになりますが、特殊関係者間においては目的によって時価が歪められる可能性も考えられます。
そのため、時価の判定には細心の注意を払って取引することが肝要です。

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