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【税理士向け】保育園・こども園の会計処理を把握する

待機児童問題を背景にその数を増やした保育園やこども園。この業界は今や会計事務所等の専門家支援が必須といえます。今回は会計事務所が顧問として支援業務を行う際に必要な実務のポイントについて解説していきます。

保育園・認定こども園・幼稚園の違いを理解しよう

保育園、こども園の会計処理について学ぶ前に、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。なお、「保育所」は「保育園」の法律上の呼称であり、両者に違いはありません。

保育園 認定こども園 幼稚園
根拠法令 児童福祉法 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 学校教育法
対象 保育に欠ける乳児・幼児 保育に欠ける子も欠けない子も受け入れて、教育・保育を一体的に行う。 満3歳から小学校就学の始期に達するまでの幼児
利用料等(幼児教育・保育の無償化) 3歳~5歳の利用料は所得にかかわらず無償。
0歳~2歳の利用料は住民税非課税世帯を対象として無償。
私学助成園は所得にかかわらず25,700円を上限に給付。
新制度移行園の利用料は所得にかかわらず無償。
実費徴収金は無償化の対象外

幼稚園とは

幼稚園は3歳~5歳を対象に小学校以降の教育の基礎を作るための幼児期の教育を行う学校です。都道府県が認可指導監督を行い、学校法人が設置・運営しています。
幼児教育・保育の無償化により、子ども子育て支援新制度の対象とならない幼稚園(私学助成園)の利用料については25,700円を上限として無償、新制度対象園の利用料については所得にかかわらず無償となります。ただし、通園送迎費等の実費徴収金は無償化の対象外となります。

保育園とは

保育園は0歳~5歳を対象に保育を行う施設で、次の4つの運営形態があります。

認可保育園

認可保育園は0歳~5歳を対象に就労などのため、家庭で保育のできない保護者に代わって保育する施設です。児童福祉法に基づき都道府県、政令指定都市、中核市が認可指導監督を行い、社会福祉法人や学校法人、株式会社などが設置・運営しています。
幼児教育・保育の無償化により、3歳~5歳の利用料については所得にかかわらず無償、0歳~2歳の利用料は住民税非課税世帯を対象として無償となります。ただし、通園送迎費等の実費徴収金は無償化の対象外となります。

地域型保育事業(小規模保育所等)

認可保育園(原則20人以上)より少人数の単位で0歳~2歳の子どもを保育する施設です。社会福祉法人、学校法人、株式会社等が設置・運営しています。
地域型保育事業には家庭的保育、小規模保育、事業所内保育、居宅訪問型保育の4種類あり、保育環境や運営、給食の提供など一定の基準を満たす事業所を市町村が認可する保育事業です。

企業主導型保育事業(企業主導型保育施設)

企業主導型保育事業は「多様な働き方に応じた保育の提供」を目的に作られた制度です。施設によって保育時間や保育内容は様々です。
公益財団法人児童育成協会が指導・監査し、社会福祉法人や学校法人、株式会社等が設置・運営しています。

認可外保育所(認証保育所等)

認可外保育所は、児童福祉法上の保育所に該当するが国から認可を受けていない保育施設です。認可保育園よりも設置・運営に関して基準が緩いことが多いですが、認可外保育施設として児童福祉法を遵守する必要があります。

認定こども園とは

認定こども園は幼稚園と保育園の機能や特徴を併せ持ち、地域の子育て支援も行う施設で、就学前の子どもに対して教育・保育を一体的に行います。
0歳~2歳は共働き世帯や親族の介護などの事情により家庭で保育のできない保護者が対象、3歳~5歳は保護者の就労状況にかかわらず利用することができます。

幼児教育・保育の無償化により、3歳~5歳の利用料については所得にかかわらず無償、0歳~2歳の利用料は住民税非課税世帯を対象として無償となります。ただし、通園送迎費等の実費徴収金は無償化の対象外となります。

認定こども園には下記の4つの類型があります。

  • 幼保連携型認定こども園(社会福祉法人、学校法人が設置・運営)
  • 幼稚園型認定こども園(学校法人が設置・運営)
  • 保育所型認定こども園(設置主体に制限なし)
  • 地方裁量型認定こども園(設置主体に制限なし)

保育園・こども園で行うべき会計・税務処理

学校法人、社会福祉法人、株式会社等が設置できる施設についてまとめると下図になります。〇印のついているところが設置できる施設になります。

施設の種類 学校法人 社会福祉法人 株式会社等
幼稚園
認可保育園
認定こども園 幼保連携型認定こども園
幼稚園型認定こども園
保育所型認定こども園
地域裁量型認定こども園
地域型保育事業
企業主導型保育事業

法人格ごとに準拠すべき会計基準や税務上の取扱いが異なりますので、その違いを理解することが大切です。

社会福祉法人が設置する場合

社会福法人は、社会福祉法人会計基準に基づき法人全体・事業区分別・拠点区分別に資金収支計算書、事業活動計算書及び貸借対照表やこれらの内訳表を作成します。
さらに、計算書類を補完するものとして附属明細書、計算書類の注記、財産目録を作成します。附属明細書は19種類ありますが、このうち必要となる明細書のみを作成します。

社会福祉法人における主な税務上の留意点は以下の通りです。

  • 法人税

法人税法上の収益事業に該当する事業に対して法人税が課されます。

  • 法人住民税(都道府県民税及び市町村民税)

収益事業を行っていない場合、法人税割及び均等割ともに課税されません。

また、法人税法上の収益事業を行っている場合であっても、収益事業の所得の金額の90%以上の金額を当該法人の社会福祉事業に充てている場合には、法人住民税における収益事業には該当せず課税されません。

  • 法人事業税

収益事業から生じた所得に対して法人事業税が課税されます。

  • 消費税

認可保育園や認定こども園は第2種社会福祉事業に該当するため、認可保育園や認定こども園を運営する事業として行われる資産の譲渡等は消費税法上の非課税売上に該当します。
なお、社会福祉法人は消費税法別表第3に掲げる公益法人等に該当しますので、簡易課税制度の適用を受けている場合を除き、特定収入割合が5%を超える場合は消費税法第60条の仕入税額控除の計算の特例の適用があります。

学校法人が設置する場合

学校法人は学校法人会計基準に基づいて以下の書類を作成します。

  • 金収支計算書並びにこれに付属する内訳表及び活動区分資金収支計算書
  • 事業活動計算書及びこれに附属する事業活動収支内訳表
  • 貸借対照表及びこれに附属する固定資産明細表、借入金明細表、基本金明細表

なお、幼稚園のみを設置している学校法人は、活動区分資金収支計算書や資金収支内訳表、事業活動収支内訳表については作成する必要はありません。学校法人における保育園・認定こども園の主な税務上の留意点は、社会福祉法人の場合と同様です。

その他の公益法人が設置する場合

その公益法人が準拠すべき会計基準に基づいて会計処理を行います。
ただし、特定教育・保育施設等の事業ごとに区分した収支計算書又は損益計算書を作成し、企業会計基準による貸借対照表(流動資産及び流動負債のみを記載)、借入金明細書、基本財産及びその他の固定資産(有形固定資産)の明細書、積立金・積立資産明細書を作成しなければなりません。

その他の公益法人における主な税務上の留意点は以下の通りです。

  • 法人税

原則として、法人税法上の収益事業に該当する事業に対して法人税が課されます。ただし、公益社団法人、公益財団法人が公益目的事業として行っているものについては、たとえ法人税法上の収益事業に該当したとしても課税されません。
また、一般社団法人及び一般財団法人のうち法人税法上の非営利型法人の要件を満たさなくなった場合には、普通法人に該当することとなりすべての所得に対して課税されます。

  • 法人住民税(都道府県民税及び市町村民税)

収益事業を行っていない場合、法人税割は課税されませんが、均等割は課税されます。ただし、条例により減免措置がある自治体もありますのでホームページ等での確認が必要です。
なお、全所得課税となる一般社団法人及び一般財団法人については、株式会社同様、すべての所得に対して法人住民税(法人税割、均等割)が課税されます。

  • 法人事業税

収益事業から生じた所得に対して法人事業税が課税されます。
なお、全所得課税となる一般社団法人及び一般財団法人については、株式会社同様、すべての所得に対して法人事業税が課税されます。

  • 消費税

認可保育園や認定こども園を運営する事業として行われる資産の譲渡等は消費税法上の非課税売上に該当します。
社会福祉法人や学校法人と同様、消費税法第60条の仕入税額控除の計算の特例の適用があります。

株式会社が設置する場合

株式会社は企業会計原則等の一般に公正妥当と認められた会計処理の基準に基づいて行います。
ただし、特定教育・保育施設等の事業ごとに区分した収支計算書又は損益計算書を作成し、企業会計基準による貸借対照表(流動資産及び流動負債のみを記載)、借入金明細書、基本財産及びその他の固定資産(有形固定資産)の明細書、積立金・積立資産明細書を作成しなければなりません。

株式会社における主な税務上の留意点は以下の通りです。

  • 法人税

他の営利活動を行っている株式会社と同様、法人税についてはすべての所得に対して法人税が課されます。

  • 法人住民税(都道府県民税及び市町村民税)
  • 法人事業税

法人住民税や法人事業税についても、すべての所得に対して法人住民税や法人事業税が課税されます。

  • 消費税

認可保育園や認定こども園は第2種社会福祉事業に該当するため、認可保育園や認定こども園を運営する事業として行われる資産の譲渡等は、消費税法上の非課税売上に該当します。
消費税法第60条の仕入税額控除の計算の特例の適用はありません。

認可外保育施設等の税務上の取扱い

認可外保育施設における税務上の取扱いについては、国税庁の質疑応答事例や文書回答事例などを確認しておく必要があります。

決算書作成時の注意点

実績報告書

保育園や認定こども園には、様々な補助金が交付されます。補助金は交付要綱が定められており、その内容に基づいて交付されます。交付要綱に沿った支出がなされているかをチェックするために、実績報告書を提出します。
実績報告書の提出により補助金の交付金額が確定し、補助金が確定することで決算書を作成することができます。そのため、決算を行う上で実績報告書又は補助金交付決定通知書の確認は必須の手続きとなります。

発出通知の確認

認可保育園に対しては、『子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について』(平成27年9月3日府子本第254号・雇児発0903第6号 最終改正平成30年4月16日)という通知が発出されています。この通知は、認可保育園の会計顧問を行うにあたって、必ず目を通し理解しておかなければならなければならないものです。

社会福祉法の改正

平成28年の社会福祉法改正により、規模の大きな社会福祉法人は会計監査人を設置し、公認会計士又は監査法人の監査が義務付けられました。

また、社会福祉法人は毎会計年度その保有する財産について、事業継続に必要な財産を控除した上で、再投下可能な社会福祉充実財産を算定します。社会福祉充実財産の算定は、厚生労働省が公開している充実残額算定シートを使用して行い、残額が生じる場合には、社会福祉充実計画を策定し、所轄庁の承認を得た上で、地域の福祉ニーズ等を踏まえつつ、当該財産を計画的かつ有効に再投下しなければなりません。

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