立命館大学を卒業後、人事派遣会社に就職。60年続く前小島会計事務所に入所後、税理士登録。2013年千代田税理士法人として法人化。2020年代表社員に就任。
人材派遣会社から転身し、税理士となった市邉先生。税理士になったきっかけや事務所づくりで大事にしていることを伺いました。
実は学生の頃から目指していたとかではなく、もともとは会社員で人材派遣会社に勤めていたんです。営業は楽しくて成績も個人トップや支店トップも何度か頂きました。入社して数年経った頃ですかね、リーマンショックがあり、業界全体が沈む中で自分はこのままでいいのかというもやもやや、非正規労働に対する法規制があり、この先の人材派遣業に不安が出てきて、弁護士をやっている妻の父に悩みを相談したんです。そしたら税理士を目指したらどうかというアドバイスを頂戴しまして。
そのときまで税理士という職業を特別意識したことはなかったんですが、私が立命館という西日本で有数の公認会計士輩出校出身でして、大原と連携している日商簿記2級を目指す講座を受講していたり、大原主催の大学対抗簿記大会の2級の部で満点優勝したりと簿記が好きだということを思い出し、税理士を目指してみようかなと思いました。
それが税理士を目指したきっかけではあるんですけど、税理士のどこにおもしろみを見出したかということもお話ししますと、もともと人材派遣会社に行きたかった理由は人事コンサルをやりたかったんです。私、高校はラグビー部で、大学ではサークルでチームの主将をしていたのですが、人がやる気を出した時に、そのモチベーションが組織に与える影響というもののおもしろさに惹かれまして。
人事コンサルとなると、制度や仕組み、賃金体系などを考えるなかで、働く人のモチベーションを上げて、企業の成果を向上させる。ただ、現実はそんなに甘くないというか、派遣という仕組みを使って人事の一環を担えたというのは若干はあるんですけど、コンサルティングほど企業の業績に直結するほどの動きはできなかったなというのが反省点でした。ですので、税理士というのはあくまで手段ですが、経営者の手助けになりたいという思いで目指すことを決めました。
5年前に経営を受け継いだ時から一番大事にしていることは、「人を辞めさせない」ということです。パートナーの椎名と私は、当時から残っていた二人なんです。あとは全員辞めているわけなので。辞める理由というのはそれぞれあったと思うんですけど、当時はブラック企業だったんですよね。始発で来て終電で帰るとか、給与体系が形骸化していたりとか。人が辞めるとお客さまの担当が変わる、ころころ変わると自ずと品質が下がっていくという悪循環だったので、仕事を安心してできる、楽しみながらやってもらえる環境を作るというのが一番と考えています。
そのためにテレワークの完全整備をしました。慣れないメンバーに浸透させるのは大変でしたが誰も出勤しなくてもある程度業務が回る状態になりました。それが2020年ですね。紙ベースの申告書をいきなり全部データ化というのは難しいですけれど、まずその年の申告をデータでやり、翌年もという形で、3年回って全部データになったころからある程度回り出しましたね。スタッフが16人くらいいる中で、今日も2人くらいしか出社していません。
テレワークの環境づくりに関しては全て私が調べて実行に移しました。テレワークの普及率を上げたいという東京都の取材も受けてそちらでも話しましたが、例えばIT部門などの詳しい人に任せるのではなく、代表がある程度詳しくなりトップダウンで実行に移せるかが重要だと思っています。
たまに、メンバーが何をしているかわからないからテレワークをさせていないというような話を聞くのですが、私としては全く逆の考えでして、それは管理能力が足りていないのでは、と思うんです。テレワークで何をしているかわからないという方は、多分隣にいても何をやっているかわからないです。そうならないよう弊所では相手のディスプレイを遠隔で操作できる仕組みを取り入れ、業務などでわからないことがあったら同じ画面を見ながら教えたり、操作については実際に見せながら覚えてもらったりということを、実施しています。作業のスピードなども把握できるので、ギャップが減ってきている印象で職員の方からの評価も高いです。
他にもメタバースオフィスやVPNは今となっては必須ですね。事務所で起こりうる業務をしっかり理解して、改善していくということを常に意識しています。現場感覚をいつまでも大切にしたいと思っています。
3年3億30人。3年以内にスポットを除く顧問料売上3億というのをちょうど先日目標として決めました。前期が実質2億くらいでしたので、1億ほど伸ばすようなイメージです。事務所の規模も30名ほどまで大きくしたいなと考えています。人が増えていくとそれだけ問題が起こる可能性もありますが、調和される部分もあると思いますし、増えたほうが楽しくなりそうだなという期待もあります。
そのために、テレワークを含めた働き方改革は引き続き行おうと思いますし、弊所は特定ジャンルに特化しておらず色々経験できるので成長したい方にはうってつけなんです。年収もおそらく平均より高いですし。離職率が都内で一番低いような組織になれればと思っています。