1958年 東京都港区生
1982年 早稲田大学法学部卒業
1982年 埼玉県朝霞市役所入庁
1985年 同退庁
1986年 税理士資格取得(66607番)
1987年 ㈱川原総合経営センター入社
1992年 同退社
1992年 湯沢会計事務所開設
今回は、レガシィの講師としても、特に医師向けの顧問業務や税務・法人税務について数多くご講演いただいている湯澤先生にお話をお伺いいたしました。医業専門税理士としてご活躍されるまでにどのような歩みがあったのか、これからどのような税理士人生を歩んでいくのか、赤裸々にお話しいただいたので、士業の先生方にもご参考になるかと思います。
大学卒業後、市役所で公務員をしていたのですが、3年間勤めて仕事が合わないと感じ始めていました。その頃ちょうど、会計事務所に勤めていた父の職場の代表税理士が亡くなって新しい代表になったのですが、新しい代表と父の反りが合わなかったようで、苦労しているという話を聞きました。その時、公務員以外の道を模索していた私には、税理士になって事務所を開くのもいいかもしれない、と思ったのが税理士になったきっかけです。
父を見ていて、税理士という職業で稼ぐのは大変だと思っていたので、資格勉強中にマーケティングの本を読んだのですが、中でも、専門特化という道に光明がある気がしました。そこで、医業専門税理士を志し、まずは医業に特化した事務所に入ったのですが、思惑通りにはいかず、当時その事務所では医師の申告だけでなく資産家 の相続・節税対策等のニーズがあり、私はその対策担当部門に配属されたのです。当時はバブル期で、いろいろな相続税の節税手法が出てきて税理士がそれを実行すると、その対策を国税当局が次々に法改正により封じ込めるということが行われ、さらに税賠訴訟も頻発するようになってきていて、資産税分野の怖さも知りました。次に、医業のクライアントに対する仕事については、公務員時代の経験が生きて税務調査の対応が得意でした。担当していたクライアントから、お客さまを紹介されるようになり、税務会計業務もひととおり自分一人でできるようになりました。そこで5年半勤め上げ、満を持して独立したのですが、残念ながら、そこからは順風満帆と いうわけにはいきませんでした。お客さまの紹介は当初からもらえていたのですが、顧問契約や顧問料についてお客さまが納得のいくような説明を上手に行うことができなかったので、他の顧問料が安い事務所と比較されて契約締結にこぎつけることできませんでした。そうなると、紹介してくれる人も減っていき、困難な状況に陥りかけていました。
まず、医業専門にこだわらずに、小さな案件でも対応していかなければならないと考えて、生命保険の外交員の方々の申告業務を引き受け始めました。ひとつずつの案件を丁寧にこなしていくうちに、数多くの外交員の申告業務を任せてもらえるようになっていき、事務所の経営が安定していきました。また、医業向けにも、ホーム ページをいち早くつくり、そこで事業計画書作成ツールなどの経営に役立つツールを公開していたら、そこから少しずつ、医師のお客さまが来てくれるようになってきました。そこで、今度は医師のお客さまにお話しして喜ばれた話題をどんどんホームページにアップしていくと、検索で私のホームページにたどり着いて興味を持ってくれる先生が増えていったのです。また、メディカルスタディ協会という組織を立ち上げ、医師の先生方向けではなく、医療業界の周囲の人たち(医療品の卸売業者の営業担当者など)向けに業界の情報などの情報交換をする勉強会を立ち上げました。するとその勉強会のメンバーから、医師のお客さまの紹介を数多くもらえるようになっていったのです。それからは、特に開業支援の仕事が数多く来るようになりました。開業支援をしていると、クリニック等の開設にかかわる数多くの会社との結び付きが強 くなり、業界関係の会社間で有名になると、医師もますます信頼してくれるようになるという好循環も生まれるようになってきて、その結果として、今、医業特化の税理士として知られるようになりました。
今、記帳代行や税務申告だけでは採算が合わない時代になってきていると言われていますが、それでもそういった支援が必要なのは間違いありません。かといって、会計事務所にとって採用難のこの時代に人員を増やすという方法も簡単ではありません。そのためには、最新のITを駆使して仕事の効率を上げていくしかないと考えています。事務所の採用方針としては、若い人を将来の独立を前提にして採用し、優秀な税理士に育ててから独立してもらいます。独立後も外部委託という形で連携していけば、お互いにメリットがあると考えています。他にも時間的余裕のある外部の税理士の先生方と連携して仕事を進めていくことも視野に入れています。私自身の希望としては、引退しないでずっと仕事をしていきたいと考えています。常に新しいことをしたいと考えていて、最近は「FIREする」(=金融資産からの利益だけで生活できる ようになること)といった金融投資の勉強もしています。この知識も、自分自身はもちろん、お客さまや社員の資産形成にも役立つと思っています。「今日は、今後の人生で一番若い」という言葉を念頭に、今より少し先、少し前の未来にフォーカスして、今後の税理士人生も歩んでいきたいと思います。