大学卒業後は監査法人で勤務されたと伺いました
はい、新卒で監査法人に入社して、東京(本社)の監査事業部で約11年間勤務しました。主に上場企業の会計監査業務を担当し、その他にもIPO支援や内部統制の支援など、幅広い業務に携わりました。監査業務は、企業の財務状況をチェックし、間違いや不正を見つける仕事です。
そのため、企業側からはどうしても歓迎されないことの多い立場ですが、そんな仕事でも時折「ありがとう」と感謝されることがありました。企業の改善点を指摘し、それが実際に改善されたときに感謝の言葉をもらうと、自分の仕事が価値を認められたと感じ、大きなやりがいを感じました。
例えば、ある上場企業の監査を担当していた時のことです。その企業は急成長しており、内部統制が追いついていない部分がありました。私はその点を指摘し、具体的な改善策を提案しました。最初は企業側も難色を示しましたが、最終的には私の提案を受け入れてくれ、内部統制を強化することができました。結果、企業の業績も安定し、経営陣から感謝の言葉をいただいたときは非常に嬉しかったです。
一方で、辛い経験もありました。特に、企業の不正を発見し、それを訂正させる業務は非常に大変です。不正を見つけた場合、その全容を解明し、正しい財務状況を把握するために多くの時間と労力を費やす必要があります。具体的には、ある企業の経営者が会社の資金を多額に流用していたケースがありました。その不正を発見し、訂正させるために、短期間で相当ハードなネゴや調査もありましたが、最終的には正しい財務報告を実現することができました。
監査法人には強制的な捜査権がないため、企業内部の記録を調査する際には多くの制約があるのとともに、企業側からの多くの協力が必要です。そのような状況下では特に企業とのコミュニケーションを重視し、こちらの要求する解決方法を期限の迫る中で的確に遂行してもらうことが重要です。企業側で出来ることの限界までを引き出しながらも、期限が迫る中で監査意見を出せるところまでやり切ることが大変でしたが、なかなか得難い経験だったと思います。
その後はさいたま事務所に異動しおよそ6年勤めました。ここでも引き続き監査業務に従事しましたが、クライアントは地方の中堅企業の経営者で、大手企業よりもマネジメント層と距離が近く、より深いコミュニケーションをとりながら密に仕事ができたことと、東京事務所に比べて少ない人数の事務所において、その運営に直接携われたことは、その後の自分の独立開業につながる貴重な経験でした。