千葉県柏市出身。大学卒業後、保険代理店勤務を経て、公認会計士試験に合格。監査法人トーマツにて、主に金融機関や独立行政法人の法定監査を担当。監査業務を通じて培った俯瞰的な視点と専門性を活かし、地元柏で独立開業。現在は、法人・個人を問わず幅広い税務顧問業務を行う傍ら、資金繰りやキャッシュフローの改善支援、IT・クラウドツールの活用など、経営者の実務に寄り添うサポートを提供している。
監査法人を経て開業。資金繰りやキャッシュフローの改善などに力を入れている甲州先生に独立のきっかけや大切にしていることをお伺いしてきました。
税務の仕事に興味を持ったきっかけは、大学4年のときに参加した会社説明会でした。登壇していた税理士の先生のお話を伺い、「中小企業を支える税務の仕事って面白そうだな」と思ったのが原点でした。
大学卒業後は一度、保険代理店に就職しました。ただ、やはり税務の世界に進みたいという気持ちが強くなり、半年ほどで退職して受験勉強に専念することにしました。
税務をやりたいという目的は明確だったので、より短期間で取得できる会計士を選び、約2年かけて試験に合格しました。
トーマツでは、金融系のお客様を対象に、法定監査や会社法監査、独立行政法人の監査などを担当していました。先日レガシィさんのインタビューを受けられた河野さんとも同じチームで働いたことがあります。
入社してまず感じたのは、やはりお客様のレベルの高さです。仕事柄大企業の管理職の方々と会話する場面が多く、知識のアップデートに日々追われていたことを覚えています。中でも特に印象に残っているのが、新規のクライアントを担当したときのことです。前任の監査法人と比較され、「前はここまでやってくれていた」といった要望やギャップに応えるのが難しく…。初年度ならではの折り合いの難しさを強く感じましたね。
トーマツでの経験を積む中で、やはり「中小企業の支援をしたい」「もっと現場に近い立場で仕事をしたい」という想いが強くなっていきました。最初から独立を視野に入れていたので、退職後は生まれ育った柏に戻り、市内の税理士事務所で実務経験を積んだのち、個人事務所として開業しました。
開業当初は、お客様ゼロからのスタートです。不安がなかったといえば嘘になりますが、知人の紹介やWebの税理士紹介サービスなどを活用しながら、少しずつ契約を増やしていきました。法人顧問に発展するケースもあれば、確定申告のスポット業務でつながるお客様もいましたね。
正直、「このまま生活できるのか…」と不安に感じた時期もありましたが、自分の名前で仕事をするという責任感と自由度が背中を押してくれました。
特に力を入れているのが「資金繰り」です。経営者の方は日々忙しく、手元のキャッシュがある間は将来のリスクに気づきにくいことも多い。でも、実際には“このままいくと〇月頃に資金がショートする”というようなタイミングが見えていたりするんです。だからこそ、先回りしたアドバイスが大切だと感じています。
ただ、まだ余裕があるうちは危機感が伝わりにくいのも事実。以前、「やめておいた方がいい」とお伝えした投資を実行されてしまい、のちに本当に資金繰りが厳しくなったケースもありました。その経験から、より「伝わる資料づくり」「伝わる説明」に力を入れるようになりました。
顧問先との関係づくりにおいては、「何かあったときに、すぐに連絡してもらえる関係性」を重視しています。税務相談に限らず、「パソコン買いたいんだけど、経費になる?」とか、「このタイミングで大きな出費しても大丈夫かな?」といった雑談レベルの相談でも歓迎です。フランクに相談してもらえた方が、リスクも減りますし、先回りのサポートがしやすいんですよね。
今後はAIなどのデジタル技術も活用して、一人でもより多くの事業者さんをサポートできる体制を作っていきたいと思っています。とはいえ、自分が体調を崩せばすべてが止まってしまうので、そこは正直な課題です。
また、先ほどお話ししたように、「響く資料」や「刺さる提案」ができるようになることは、ずっと取り組んでいきたいテーマです。経営者にとって本当に伝わる言葉やビジュアルって何だろう?というのを常に考えて、日々改善を重ねています。
「やりたいことが見つからない」という方ほど、いろんな業務を経験してみてほしいですね。私自身も、監査以外の部署、例えばリスクアドバイザリーのような領域にももっと関わっておけばよかったな、と感じることがあります。
どんな仕事も経験してみないと向き不向きは分からないですし、将来的に独立を考えているなら、より広い視点を持っておくことが強みになります。
独立は大変な面もありますが、その分「自分の名前で仕事をして、感謝される」という喜びもひとしおです。個人としての力を磨きながら、日々成長していける仕事だと思います!