大学在学中に会計士試験に合格し、監査法人に就職。日本、アメリカ、イギリスでの勤務経験を持ち、2022年に独立開業し、2024年には監査法人を設立。SMASHグループ の代表も務める。著書に、『次世代リーダーが知っておきたい 海外進出”失敗”の法則』(パノラボ )がある。
アメリカやイギリスでの監査法人勤務歴もある森先生。会計士を目指したきっかけや胸に抱く熱い想いなどをお伺いしてきました。
幼少期に色々と夢がある中で、その一つに父親が税理士だったので幼い頃は自分も税理士になるのかなと漠然と思っていました。しかし、父が「これからの時代は税理士より会計士だ」とぼやいていたことが心に残っていたのと、高校生や大学生の頃に、中田英寿選手やイチロー選手が海外で活躍する姿を見て、自分もグローバルに活躍したいと考えるようになりました。
それで、手に職を持ち、海外でも活躍できる会計士を目指すことにしたというのがきっかけですね。加えて、会計士なら数値面や経営面で経営者を支えられると感じたことも大きな理由です。正直に話すと、一般の会社には合わないと思い、自由に生きたいという思いもありました笑。
大学在学中に会計士試験に合格した後、一般的にはすぐ監査法人に就職するところを、働き始める前にしかできないことをやりたいという思いで、1年間の休暇期間を取りました。この期間中、地元の会社でアルバイトをしたり、海外で放浪生活をしたり、山奥の旅館に住み込みで働いたりしました。特に旅館では、朝早く起きて掃除や食事の準備をし、昼間はスキーを楽しむという生活を送りました。
その後、監査法人に就職し、実務に入りました。最初の5年間は日本で働き、その後アメリカで2年、再び日本で3年、そしてイギリスで2年勤務しました。各国での仕事のやり方や文化の違いは興味深いものでしたね。アメリカでは、1月と2月の繁忙期以外は比較的ゆったりとした働き方をしており、金曜日の午後は同僚とバーで過ごすこともありました。
一方、イギリスでは、実力主義が強く、仕事ができる人しか受け入れない雰囲気がありました。契約交渉も非常に巧妙で、下準備をしっかり行い、最終的に良い結果を得ることが求められました。同じ英語圏でも、国によってこれほどまでに仕事の進め方が異なることを経験できたのは非常に面白かったです。
監査法人を退職したきっかけは、組織に対する疲れと自分の力を試したいという思いからでした。特に後者が大きく、私が小さい頃から可愛がっていただいていた父の会社の従業員さんとの再会や、会社の現状を聞くうちに、自分が何かしなければという気持ちが強まるとともに、元々どうせやるなら日本一の会計事務所だ、と思っていたところ、昔、父が「日本一の会計事務所にしたい」と呟いていた記憶も蘇り、その夢を引き継ぎたいと思うようになりました。
2022年に東京で独立開業し、現在は東京と愛知を行き来しながら仕事をしています。東京では外資系企業や大手企業をクライアントに持ち、愛知では愛知県を中心に中小企業をサポートしています。愛知の会社は6つの法人から成り、それぞれに代表がいます。私はホールディングス会社の代表取締役としてグループ全体を統括していますが、各法人には別の代表がいるため、親族経営にこだわらず適材適所の人材配置をしています。現在、従業員は約100人おり、監査法人とは異なる環境でのマネジメントに挑戦しています。異なる文化や仕事の進め方に適応しながら、グループ全体の成長を目指しています。
最大の課題は「人材」です。人材の成長やカルチャーへの適応には時間がかかり、すぐに解決するものではありません。特に、50代以上のベテラン社員と新卒採用で入社した若手社員との間に大きなギャップがあります。創業してから半世紀近く経つ一方で、グループ経営並びに積極的な新卒採用をここ最近数年間で進めてきたことも影響しています。今後5年から10年で、現在の20代が主力となるため、彼らの成長を見守りつつ、次の世代に繋げていくことが重要だと考えています。
スタッフの定着と夢やビジョンの共有にも注力しています。例えば、「日本一働きやすい会社」を目指すというビジョンを掲げ、従業員にもその目標を理解してもらうよう努めています。創業50周年に向けて、会計業界でブランドナンバーワンを目指し、ロゴや会社の文化、歴史を広めることに注力しています。
社内的には、中間層の育成が課題です。新卒採用に力を入れ、半年間の教育研修プログラムを実施し、クライアント対応ができる人材を育てています。教育は非常に重要であり、特に中途採用にもここ最近注力を注ぎ始めています。グループの理念や方向性に賛同できる方と一緒に働くこと、そして何よりも熱い気持ちを持っている人材の採用を目指しています。人材のテーマは変わらず、外部からの優秀な人材も積極的に受け入れ、内部でも教育・研修を続けています。
これらの取り組みを通じて、組織全体の成長と次世代へのバトンタッチを目指しています。これからも挑戦を続け、社員一人ひとりが成長し、会社全体が発展していくことを期待しています。