お問い合わせ

お電話(平日9:00~17:30)

フリーダイヤルのアイコン 0120-00-8377 メールのアイコン メール

専門家インタビュー

トップダウンからボトムアップへ |いろいろ失敗した税理士が事務所運営で大事にしているものとは

武蔵工業大学(現 東京都市大学)卒業後、一般企業や会計事務所を経て、2016年に宮﨑会計・税理士事務所(宮﨑雅大税理士事務所)を開設。開業当初から、クラウド会計の良い部分・気を付けなければならない部分を考えながら、適切な運用ができるように日々「こうすればうまくいくかな?」と模索しながら事務所運営をしています。

事務所運営に力を入れている宮﨑先生に、税理士になったきっかけや心掛けていることなどをお伺いしました。

税理士を目指したきっかけを教えてください

実は学生時代から目指していたわけではないんです。理念や目標が無く、ふわっと税理士試験の道に入りました。武蔵工業大学(現 東京都市大学)の工学部経営工学科を卒業後、一般企業に就職したのですが、雰囲気が合わず体調を崩して辞めてしまいました。仕事を辞めて何をしようかと思ったときに、大学時代に少し触れていた簿記を勉強したらおもしろくて、その流れで税理士を目指しました。勉強を開始したときは、まさか10年近く受験することになるとは想定していなかったです。そんな感じでスタートしたのですが最終的に5科目合格できたのは、非常に運が良かったと考えています。私の場合、他の方と比べて時間はかかったと思います。合格できたのは家族や周りのサポートがあったおかげなので、家族や応援してくれた方々にはすごく感謝しています。

独立に関するエピソードを教えてください

恥ずかしながら、ここも体調を崩してなんですよね。独立前にいくつか会計事務所で働いていたのですが、目の前の仕事で気になることがあったら「こういう風にしたら、会計データの登録などが楽になるのでは?」と思ってしまうタイプなんです。立場や環境次第ではプラスの要素かもしれませんが、お客さんや事務所の方針が新しいことや変化を好まないということがいくつかあり、自分と環境がマッチしなかったんだと思います。多分私は言われたことをコンスタントに行う仕事は合わないんじゃないかなと思います。今だからこそ分かるのですが、職場の方々にも迷惑をかけたのでは?と反省しています。当時の職場の方々には申し訳ない気持ちが強いです。 勤め人としてしっかりとした貢献ができなかった反省を踏まえて、「仮に独立したら今までやったことがないことをトライしよう」と明確な計画性は無かったのですが、ぼやっとした方向性を持って独立開業しました。 独立したのは2016年10月で、ちょうどクラウド会計が世に出始めた頃ですね。私自身ああいった新しいサービスなどに触れるのがめちゃくちゃワクワクするタイプです。 クラウド会計以外にもチャットツールやテレビ電話などが、お仕事の現場でも一部のビジネスマンが利用し始めた時期かと思います。 クラウド会計を触ってみて「果たしてそのまま仕事で使えるかな?」というのがそのときの印象でした。当時3ヶ月ぐらいお客さんが実質ゼロだったので、たくさん触ってfreeeやマネーフォワードの癖を自分で把握する経験ができました。それぞれ触ってみてお客さんに合わせて提案しなきゃいけないんだなというのを肌で感じました。 その最初の向き合う3ヶ月の期間のお陰で、freeeやマネーフォワードを適切に運用することの大切さを私は肌で感じることができました。その時の経験を事務所メンバーに共有しながら仕事しているため、事務所メンバーも適切な運用を心がけているのでは?と思います。
私のようないろいろなことに興味を示す税理士、そして事務所の経営者だからこそ、事務所運営については、様々な失敗も経験しましたね。そのせいで事務所メンバーにも迷惑をかけていると思います。いろいろあるのですが代表的な2つが「価格設定の間違え」と「事務所の雰囲気や方向性に合わない方の採用」です。 まず、価格設定が適切ではなく事務所メンバーが疲れる環境になっていたと思います。分かりやすい言葉で言いますと「薄利多売」をしてしまっていたと考えています。freeeやマネーフォワードが普及し始めた頃に開業したのですが、そのころ「税理士業界の価格はこれくらいになるのでは?」といろいろと調べて料金表を設定していました。当時はその価格が市場価格より安い設定だったと今だからこそ分かります(経営は値決めが命で、価格が適切ではないと経営がおかしくなると実体験した税理士も珍しいのでは?と思います)。そして価格設定が適切じゃなかったからこそ、事務所メンバーもペースを速めて増やしていました。2年で18人の事務所を目指すぞと息巻いていたんですが、私が天狗になってしまっていたんですね。適切な計画では無かったため、事務所の文化や風土に合わない方を採用してしまって、退職者もかなり多い事務所だったのでは?と思い返してみると、すごく反省ですね。
 

それ以降メンバーとの関わり方は変わりましたか

はい、良い職場環境を提供していこうということを意識するようにしました。それには薄利多売をやめることも必須になるので、お客様に交渉や説明もしましたね。 また、長く勤めてくれているメンバーも先ほど話していたかと思いますが、それまでは完全にトップダウンだったんですけど、皆さんに意見を出してもらうようにし、主体的に動くようお願いしました。 その中でも「このアクションは、事務所全体としてプラスにならないかも?」といった行動や言動を事務所メンバーがした際には、話し合いや考えのすり合わせが今まで以上にできているのでは?と感じます。 様々な反省や見直しができているのは、今一緒に活動してくれているメンバーの我慢と協力があってこそだと考えています。 もう私ひとりでは成り立っていない事務所かと考えます。 その結果、ある程度同じ文化や考え方が少しずつ共有できていると思いますし、価値を一致させるための話し合いの機会を今まで以上に設けられているのでは?と思います。「事務所運営」「情報発信」「勉強会」「データすっきり」など4つのプロジェクトグループも作りました。それぞれのグループが事務所全体の課題に取り組んで、事務所の成長に貢献してくれているのでは?と思います。 税務・会計以外にも組織づくりに貢献してくれるメンバーが多いからこそ、ここまで来れているのでは?と考えます。

今後の課題や取り組みを教えてください

大きく2つあります。1つ目は、仮に私が倒れたとしても継続できる組織づくりです。今は、ある程度同じ価値観や方向性、そして少し先を見据えた事務所運営や成長に貢献してくれるメンバーが揃っています。事務所メンバーの我慢と協力で、PDCAサイクルが回せているのではないかと考えます。だからこそ、少しずつステップアップして、事務所全体も成長してきているのではないかと思います。
そのため、もし私が突然倒れたとしても、お客様に迷惑がかからず、メンバーの皆さんもちゃんと生活できるような体制づくりに取り組んでいきたいです。メンバー募集に関しても、ただ単に拡大を目指すのではなく、私たちの事務所風土や文化・メンバーのキャラクターにマッチしそうかという点で考えていて、緩やかな成長を目指しています。
2つ目は、適度にキャラクターを認め合える環境づくりです。あるメンバーがSNSを運用してみたいと言ってくれたのが、すごく良いきっかけの1つだったのではないかと考えています。(他にもいろいろとありますが、分かりやすい例として)もしあの時、その提案がなかったら、私たちの事務所は公式のSNSを開設することにはならなかったかもしれません。
SNS運用も、「私たち事務所の思い出や歴史を残せたら」というところからスタートしています。継続しやすく、事務所メンバーも楽しめるように運用できればと考えていました。そのため、Instagramには顔写真を出したり、税務に関する役立つ知識を載せたりすることはあまりしていません。『私たち事務所でこういうことがありました』『事務所全体や所長の私がどんな活動をしました』という歴史や記録を残すことができれば、私も事務所メンバーも良い思い出になるのではないかと考えています。
その活動内容を残す延長線上でSNSに投稿できればと考えています。もしかしたら継続しやすいように、「バズる」ではなく、よくある風景や出来事を「ジワる」投稿として継続できていることが、結果として事務所の様子を皆さんに『宮﨑会計・税理士事務所がどんな事務所か』を知ってもらえるきっかけになっているかもしれません。『SNS運用がすごく得意』とか『マーケティングが得意です』というわけではないからこそ、私たち事務所の特徴が出せているのではないかと考えています。
このように、もしかしたら世間で言われているセオリーとは違うかもしれませんが、私たちの事務所を好きだと思ってもらえるメンバーが、それぞれの得意なところを活かせるような環境を作れればいいなと考えています。
 
single_banner