中嶋先生
1977年生まれ
2002年 大分医科大学医学部(現在の大分大学医学部)卒業
同年 医師免許取得
2020年 放送大学大学院 文化科学研究科 修士課程修了 修士(学術)
日本医事法学会会員
小林先生
昭和63年7月2日生まれ
平成19年3月 神奈川県立藤沢西高等学校 卒業
平成24年3月 立教大学法学部法学科 卒業
平成26年3月 早稲田大学法科大学院 卒業
平成27年12月 司法研修所 入所(69期)
平成28年12月 弁護士登録(神奈川県弁護士会)
同 シーライト藤沢法律事務所 入所
交通事故・労災事件を数多く扱う小林玲生起弁護士が、法律事務所からの相談件数400件超の中嶋浩二医師に、「主治医の先生に鑑定医・協力医になってもらうコツ」についてお聞きしました。
鑑定医・協力医になってもらえそうな具体的な医師はいます。しかし、まだ協力してもらえるかは分かりません。 どのようにすれば、協力してもらえる可能性が高まりますか?
どんな案件ですか?
中心性脊髄損傷の案件です。
相手方は、中心性脊髄損傷の発症それ自体及び事故との因果関係を争ってきました。
主治医は、中心性脊髄損傷の発症は認めており、その旨の後遺障害診断書を作成してくれているので、中心性脊髄損傷と診断した具体的な根拠や外傷性であることの理由を、詳しく書面(主治医意見書)で説明してもらいたいと考えています。
なるほど。この場合、主治医は後遺障害診断書で中心性脊髄損傷について肯定しているので、弁護士さんの依頼には応じてくれる可能性が十分あります。
ただし、依頼の内容には注意が必要です。主治医の手間をできるだけ軽くする工夫をしましょう。
どういった工夫をすれば良いでしょうか?
具体的には、書面をQ&Aの様式にする。つまり、弁護士さんからの質問事項に対して、主治医が回答するという様式にして、質問事項は、それぞれ短くて具体的なものにするといいですね。
例えば、「被害者の症状は、中心性脊髄損傷によるものといえますか?」とか、「〇月〇日のMRI所見は中心性脊髄損傷と考えられますか?」といったように、主治医に肯定してほしい内容を質問事項にしていく。そうしてもらえると、医師としても楽に答えられて、作成に要する時間も短くて済みます。
結果的に、書面が出来上がるまでの期間の短縮につながるので、弁護士さんにとってもメリットが大きいと思います。
ありがとうございます。
交通事故や労災でしばしば争われるのは、「傷病の発症そのもの」と「事故と発症との間の因果関係」です。医師にする質問事項を「短くて具体的なものにする」という作業を通じて、その傷病の病態や真の争点を深く理解することが良くあります。
「因果関係は認められますか」の質問のように、つい抽象的な質問をして、医師に丸投げしたい誘惑に駆られることがあります(笑)。しかし、誘惑を振り切って、こういった作業をすることで、裁判での準備書面も充実したものになりますし、結局は弁護士自身に跳ね返ってくることなので、質問事項は「短くて具体的なものにする」を意識したいところですね。
主治医の先生自身の協力は得られなかったものの、代わりに「●●病院の▲▲医師が■■症の鑑定に詳しいよ」といった情報を得ることもあります。この場合、どのようにすれば、▲▲医師に鑑定を引き受けてもらえるのでしょうか?
この場合は、せっかく主治医の先生からありがたい情報を得たので、これを活かしたいですね。ただし、アプローチの仕方には注意が必要です。
当然ですが、いきなり、勤務先へ電話するのは避けるべきです。
まずは、手紙でアプローチしましょう。依頼事項についても、最終的には鑑定意見書の作成をお願いしたい、という気持ちを押さえて、まずは、資料をご覧になった上で、こちらの質問にお答えいただくことは可能性でしょうか、というように、最初から「なんだか大変そうなお願いだな、こっちは忙しいのがわかっていないのかな」という印象を医師に抱かせない工夫が必要です。つまり、そのくらいなら手伝ってもいいかな、と思ってもらうことがポイントです。
あと、弁護士の皆さんに意識してほしいのは、医師の学問的な興味を刺激すると、協力が得られやすいことがある、という点です。
学問的な興味を刺激するには、どうしたら良いでしょうか?
相談したい患者さんの経過とか、画像所見や後遺障害の症状が、自分で教科書とか医学論文を調べても理解できないので、ぜひ専門家のご意見をききたい、というように、あなたにしか解決できない医学的なクエスチョンなんですよ、というのを強調すると、相談された側としても、学問的な興味が刺激されて、資料を見てみたくなります。おそらく。私の経験上ですが。
まずは、入り口を簡単そうに見せるのが大事そうですね。 ありがとうございました。