2002年 3月 東京大学教養学部卒業
2005年 3月 東京大学大学院総合文化研究科修了(学術修士)
2007年 3月 名古屋大学法科大学院修了(法務博士)
2007年 12月 最高裁判所(司法修習生)
2009年 1月 坂口法律事務所
2012年 4月 愛三西尾法律事務所
今回、お話を伺ったのは、愛知県西尾市でご活躍されている弁護士の井上洋一先生です。 井上先生は実に134もの資格を取得し、その資格を弁護士業務に活かしています。そこで、資格活用法や今後の展望などをお聴きしました。
私には「高校中退、東大卒」という売り文句があるのですが、普通のレールを外れたからか、社会の仕組みやパターンにとても興味がありました。そういった興味から、大学と大学院ではドイツ哲学・社会思想史を専攻していました。ただ、哲学・社会思想史は話が大きすぎて私の手には負えなかったこともあって、学者の道は諦めました。そんな時にロースクールの制度ができたこともあり、弁護士になって社会の仕組みやパターンを実地で見てみたい、と思ったのがきっかけですね。
事務所で取り扱っている分野は、離婚・交通事故・債務整理など。典型的な地方の街弁事務所です。ただ、「人生は何度でもやり直せる」というのが私のモットーで、そのためのソリューションを提供することに力を入れています。クライアントは、別に法的な知識を知りたいわけでもないし、必ずしも弁護士が欲しいわけでもない。自分が今直面している悩みを解決してくれるソリューションが欲しいわけです。マーケティングの世界で「ドリルを売るには穴を売れ」という格言がありますが、弁護士だけの狭い思考パターンにとらわれず、クライアントが本当に欲しいものを追求することを意識しています。法的な争いになると、弁護士同士が難しい法解釈論を持ち出し、こぶしで殴り合うイメージがあるかと思います。ですが、私の発想は、じゃんけんに例えると、相手がグーを出せば、こちらがパーを出せば勝てるよね、という話です。世の中の争いも、こぶしで殴り合うだけがソリューションではありません。殴り合っても負けませんけど、痛いのは嫌ですから(笑)。押してダメなら引いてみる、パターンを変えてみる。これこそが、弁護士の事件処理が上手くいく秘訣でもあり、人生を幸せに生きるコツでもある思っています。
はい、私のもう一つの売り文句が、「134の資格を持つ弁護士」です。他の分野の資格を数多く取ることで、たこつぼ型の専門家にならないように気を付けていま す。幅広い視野から、複数の思考パターンをもって、事件処理を行うようにしています。
3本の矢として、特に弁護士・中小企業診断士・産業カウンセラーの資格がコアスキルとして役立っています。まず、中小企業診断士の資格を取ってよかったのは、貸借対照表や損益計算書が読めるようになった点です。ダイレクトに自分の事務所を数字で見れるようになったのは大きいです。また、企業のクライアントと話をするとき、数字で語れる力というのは有利に働きます。次に産業カウンセラーの資格を取得することで、傾聴やカウンセリングのスキルが手に入りました。弁護士が行う交渉は、相手を怒らせることが結構多く、理屈ばかり言ってしまうことも多いのですが、相手の感情に寄り添わないと、なかなか交渉やトラブルを終わらせることができません。その点で、勉強になったなと思います。
幅広い視野を持つべきとはいえ、世の中数多ある知識やスキルをマスターすることは、現実問題できません。では、どうやって効率よく勉強していくか、知識をアップデートしていくか、が問題になるのですが、ここでレガシィのセミナーが使えるなと思っています。1時間というコンパクトな時間で聴けるというのがいいですし、書籍を読むだけでは得られない各分野の先生の生の声が聴けるところに、私は大きな価値を感じていますね。
資格の取得数は現在134になったのですが、資格を取れば取るほど、「世の中は広いな」と感じます。自分だけの力、法律家としての力だけだと、モットーである 「人生は何度でもやり直せる」というソリューションをクライアントに提供するのは難しく、従来の仕事を融通し合う士業間の連携だけでなく、医師や産業保健師、その他各分野の専門家の方々と連携していくことが最近重要だと思っています。様々な業界の共通言語を身に付けたので、士業の多職種連携の実現の橋渡し、を模索していきたいということが、今後の展望ですね。