昭和36年7月22日生まれ。
昭和59年3月慶應義塾大学法学部政治学科卒業。
平成5年4月弁護士登録(第二東京弁護士会)。
平成22年度社会資本整備審議会住宅宅地分科会「民間賃貸住宅部会」臨時委員。同「既存住宅・リフォーム部会」臨時委員。国土交通省「中古住宅の検査及び性能表示等に関する検査枠組み検討委員会」委員。同「中古住宅・リフォームトータルプラン検討会」委員。国土交通省住宅局住宅総合整備課「賃貸住宅に関するルールのあり方研究会」委員など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
今回は、住宅産業・建築業界の法律実務に精通する犬塚浩先生に、コロナ禍の当該業界への影響と対応策について、お話を伺いました。
私が担当している東京地裁の事件では、期日が2、3か月延びたものや、未だに期日調整ができていない事件があります。ただ、現代の弁護士業務は裁判だけではありません。個別の相談は勿論、契約書の作成・チェック、交渉業務の比重が高まってきています。そのため、テ レワークが進んでいる会社については、コロナ禍にあっても以前と変わらず、継続して業務に当たることができています。また、顧客対応の面では、必要に応じて臨機応変に打合せや会議を設定できるリモート会議の利便性を実感しています。
取引面での工事遅延の問題と従業員の労務問題、この2つが挙げられます。コロナ禍による工事遅延が損害賠償請求の対象になるかにつ いては、当初から言われていました。そこで、部材メーカー、設計事務所、施工業者等の顧問先にヒアリングしたところ、意外にも大きな工事遅延は発生していないというのが実情でした。施主に対して遅延損害金が発生するかについては、まだ裁判所から明確な判断は示されていませんが、おそらく台風などと同様、天災扱いになるのではないかと思われます。一方、労務問題ですが、むしろこの点で悩んでいる会社が多いと感じています。コロナ感染予防の観点では、出社命令の可否の問題があります。例えば、リモートの継続を申し出た従業員に対して出社を求め、その従業員が感染した場合の会社側の責任の有無です。現状では、会社側に法的責任が必ず生じるとは言い難いのではないかと考えています。
また、社内に感染者が出た場合の情報開示の問題もあります。これは、社内対応と対外的対応に分かれます。対外的対応について言うと、例えば住宅メーカーの営業先や住宅展示場においては、濃厚接触者に関する情報開示は当然必要になります。ただ、濃厚接触者について明確な定義がなされているわけではないため、どの範囲に、どのレベルの情報を開示するかの判断については、実際の現場では対応に苦慮するケースがあると思います。
建築現場では、作業段階によっては密になる状況もありますが、外気に触れる作業が比較的多く、暑い時期は熱中症対策に重点が置かれています。他方、コロナ対策は初めてなので、手洗い・うがいの励行、共用物の消毒が徹底されています。
テレワークは今後も継続、増加すると思いますので、自宅の仕事スペースの確保という点では、マンションより戸建ての持ち家ニーズが高まる。また同じ理由で、リフォーム需要も増えると考えられます。住宅産業は、今後も比較的堅調に推移するのではないでしょうか。
中小規模事業者のコンプライアンスの充実をサポートしていきたいと考えています。また、従来よりも安く、手軽に弁護士に相談できる仕組み作りも手掛けたいと思っています。これに向けては、コロナ対策で利便性が実証されたリモート会議を活用した法律相談システムの構築を考えています。